県産材「北信濃の杉」の家 NPO-#021 「き楽珈琲」
Togakushi/NAGANO/2016
長野市郊外の北西部に位置し戸隠五社の一つ宝光社より100mほど南に下った、近隣には由緒ある宿坊が何件も立ち並ぶ歴史的情緒あふれている場所である。旧戸隠村は平成17年に長野市に合併され、今では長野市の重要な観光スポットとなっている。行楽シーズンになると県内外はもちろん今ではパワースポットとして海外からも多くの観光客で賑わいを見せている。
お客様は趣味である登山や旅行でこの戸隠を幾度と訪れ、その雄大な山並みと四季折々の景色そして歴史的風土に魅了され、十数年前に東京から移り住み、この地で生活をされておりました。そんな中、終の棲家としての決断と共に数年前に今回の建設地を購入され、本業としての珈琲焙煎(珈琲豆の小売販売)を観光客にも提供できたらと考え、今回の店舗(珈琲喫茶)兼住宅の計画に至った。
県産材「北信濃の杉」の家シリーズの第21作品目。お客様の要望である店舗部分は、あくまでご主人ひとりで切り回しができる大きさと、ちょっとした軽食を提供したいとの事。また、今回の計画後まもなく、当地区が長野市伝統的建造物群保存地区になることの情報もあり、できる限りその景観に調和するように建物形態や色、素材については極力配慮されている。
建物配置は冬場の除雪と店舗としての駐車スペースの確保を考え、そのことは5寸勾配の大屋根形状に大きく影響している。また敷地が南傾斜地ということもあり北側法面からの融雪水の湧水も考慮して暗渠排水も計画されている。プランでは1階を店舗中心とし、2階には水廻りを除く住居スペースを確保し、店舗に置かれた薪ストーブで家中の暖が取れるようにしている。また、店舗の中央に立つ欅の大黒柱と、アサダの楕円カウンターの存在感が目を引く。
外観を「杉の板壁の黒」と「左官+リシンの白」のモノトーンとすることで風景と歴史的建造物に調和させている。そして夕暮れに喫茶店窓からこぼれる柔らかい灯りと薪ストーブの炎、そしてカウンター越しに映るご主人の姿が情緒豊かにしている。
DATE
所在地:長野市戸隠
主要用途:店舗+住宅
設計/施工:やま秀 田中建設 + 建築工房 アーキクラフト
構造/工法:木造在来軸組工法
延床面積: 163.14m2(49.35坪)
竣工:2016.11